【潜在性二分脊椎がわかるまで】⑩MRIの結果
MRIの結果を聞きに行く日。
どんよりとした目覚めだった。
そんな中でも母親たるもの、いつも通り朝ご飯の準備をして、朝ごはんを食べさせ、洗濯物を干して病院に向かった。
何もありませんでした〜で終われば良いな、、、と思いながら、息子が呼ばれるのを待った。
息子が呼ばれ、診察室に入った。
先生に挨拶し、目の前の椅子に座る。
心臓はドキドキしていた。
先生「潜在性二分脊椎で間違いありません」
聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
やっぱりか、、、という気持ちと、まさかうちの息子が、、、という気持ちが混ざって絶望した。
先生の説明によると、脊髄脂肪腫(脂肪組織が脊椎管内に侵入し、脂肪腫が脊髄圧迫及び神経組織を牽引している状態)とのことだった。
脂肪腫が神経組織を引っ張っていることが原因で
息子の左足は内側に向いていたということ、
おしりの上に瘢痕(タバコの根性焼きのような跡)が
あるということだった。
また、脊髄脂肪腫は排尿・排便障害および下肢障害(運動障害・感覚障害・関節変形)等の症状が出る可能性があるとのことだった。
手術をしても障害が残る可能性があるのは
何回もインターネットで調べたためわかっていた。
しかし、先生から直接説明されると、自分の中で受け止めるまでに時間がかかった。
先生からの今後の説明を受け、手術の日を決め、
その場を後にした。
家についた瞬間、涙が出た。声を出しながら泣いた。
妊娠前から葉酸を飲んでいなかったから?
妊娠がわかってない頃にお刺身を食べたから?
息子が歩けなかったらどうしよう?
排泄障害があったらいじめられちゃうのかな?
今までの後悔、先の不安ばかりを考えると涙が止まらなかった。
【潜在性二分脊椎がわかるまで】⑨MRI検査
MRI検査当日。
MRIなんてテレビでしか見たことがないため、あまりイメージが湧かないまま病院に到着した。
眠るための薬を看護師が息子に少しずつ飲ませるが、わさびのような辛味がある味らしく、息子は泣きながら飲んでいた。
その姿を見て、見守ることしかできない自分への腹立たしさと、息子への申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
10分ほど時間が経ち、息子はぐっすり眠った。
看護師「これから30分ほど検査をしますが、中には起きてしまうお子さんもいます。その場合は別日にもう一度検査をしなければいけません。」
別日に検査、、、。息子が薬を飲む姿は見るに耐えないため、なんとか30分持ちこたえてほしいという思いでいっぱいだった。
検査が始まり、別室で私と夫は待つ。
夫はのんきにスマホをいじり、私はただ時が経つのを待つ。
とてもとても長く感じた30分だった。
ついに私と夫が呼ばれた。
無事に検査が終わったとのことだった。
検査を終えて、ぐっすり寝ている息子を抱っこした瞬間、安心に変わった。
本当に無事に終わって良かった。
次は一週間後。
MRIの結果を聞きに行かなければいけない。
そのことを考えるだけで心がソワソワして、いてもたってもいられない日々が続いた。
【潜在性二分脊椎がわかるまで】⑧超音波検査の結果
超音波検査の結果を聞きに行く日。
今日結果がわかるんだと、ドキドキしながら病院に行った。
超音波検査の画像を見て、
先生「これじゃ、わかりませんね。MRIをしましょう。」
わからない、、、??MRI、、、??
話を聞くと、低月齢であればあるほど超音波検査でも鮮明にわかるが、息子はすでに生後6ヶ月。
生後6ヶ月にもなると、超音波検査では判断が難しいため、MRIをしましょうとのことだった。
わからない可能性があるなら、なぜ初めからMRIを勧めてくれないんだとも思ったが、その言葉は飲み込んだ。
また一週間後にMRIの予約をし、帰宅した。
その日もまた潜在性二分脊椎について調べては、息子の将来を案じ、涙する夜だった。
【潜在性二分脊椎がわかるまで】⑦超音波検査と整形外科受診
超音波検査と整形外科受診の日。
初めて来たときのような重い気持ちはなく、病院へと向かった。
まずは超音波検査から。
息子を横にさせ、先生に見てもらう。
先生「見た感じは大丈夫そうだけどな〜」
その一言で、夫と私は少し安堵した。
結果がその日に聞けるのかと思ったが、大学病院だからなのか、結果はまた次回とのことだった。
次は整形外科。
両足のX-RAYを撮ってもらい先生に見てもらうも、
骨は特に異常なしとのことだった。
また、左足の内転を見てもらうも、
「この時期の赤ちゃん(息子は6ヶ月)は、こういうことはありますよ〜」
という軽い感じだった。
私が少し悪い方に考えすぎたのかな?とも思った。
超音波検査でも整形外科でも、悪いことは言われず
胸をなでおろした日だった。
一週間後に、超音波検査の結果を聞きに行かなければならない。
そのことを考えると、胃がキリキリした。
【潜在性二分脊椎がわかるまで】⑥いざ大学病院へ
重い気持ちで向かった大学病院。
建物に入るとたくさんの科があり、人もたくさんいた。
たくさんの人がいるのを見て、
あぁこんなに元気そうな人でも大学病院に通わなければならないほどの病気を抱えているんだな
と思うと心が少し軽くなった。
私達は受付を済ませ、神経外科に行った。
息子の名前が呼ばれ入ると、メガネを掛けた物腰の柔らかそうな先生が待っていた。
先生に今までの経緯を説明し、お尻にある跡や左足の曲がり具合を見せる。
先生「とりあえず超音波検査で潜在性二分脊椎なのかどうか確認をしてみましょう。あと、一応整形外科にも行って、左足の骨が異常がないか見ましょう。」
その日は超音波の予約と整形外科の予約をして、終わった。
一日でいろいろ検査ができると思っていた私は、想像以上にも早く終わったことに驚いた。
2020年11月6日。
この日から大学病院通いがスタートした。
【潜在性二分脊椎がわかるまで】⑤小児科受診
待ちに待った夫の休み。
私たちは、息子の予防接種などでいつもお世話になっている近所の小児科に行った。
いつもどおり問診票を書いて、呼ばれるのを待つ。人もそこまでいなかったため、息子の名前が呼ばれたのもすぐだった。
先生「今日はどうしたんですか?」
私「お尻にディンプルがあって、、、」
※日本ではお尻にある跡のことを皮膚洞というが、韓国ではディンプルという。
その言葉を言った瞬間、先生の顔つきが変わった。
先生「ディンプル!?!?早く見せてください!!」
先生の言葉から、焦りや驚きなどが伝わった。
診察台に息子を横たわらせ、お尻の跡を見せる。
先生「なんでこれを早く言わなかったんですか!!産婦人科で言われなかったんですか!?」
先生は若干怒っているようにも聞こえた。
夫「産婦人科で確かに言われましたが、健康状態は良好と言われたため大丈夫かと思い、言っていませんでした。」
夫はこういうとき冷静に伝えることができるため、何かと頼りにしている。
私は先生の反応に驚いて、言葉がとっさに出なかった。
先生「息子くんが産まれて6ヶ月経つのに、、、4ヶ月のときの健康診断のとき、私は確認しなかったのかしら、、、」
先生も先生で狼狽えているようだった。
韓国では4ヶ月頃に生後初めての健康診断がある。
日本の乳幼児健診と同様に、体重や身長は伸びているか、名前を呼んだら反応があるかなど、身体面や発達面で成長しているか確認する。
その際に、先生はお尻の方までは確認をしていなかった。
それを覚えていた看護師さんが
看護師「先生、お尻の方まで見ていませんでしたよ。」
その言葉を聞いた先生は、若干責任感を感じているようにも見えた。
先生「わかりました。今から紹介状を書くので、このあとすぐ大きい病院に電話して、予約した日にちを教えてください。あと、できるだけ早い日にちで予約をとってください。」
どこの病院が良いんだろう、、、と考えていたときに看護師さんが教えてくれた。
看護師「ここら辺の近くなら大学病院、潜在性二分脊椎の手術で有名な病院はソウルの○○○病院、○○○病院ですよ。」
私たちが住んでいるアパートから車で5分ほどの距離に大学病院があった。
そこは潜在性二分脊椎の手術を担当する神経外科ももちろんあるが、果たして腕が良いのかわからない。
手術の腕だけで考えるとソウルの病院だが、ソウルに行くとなると車で片道2時間。
それにその車さえも私たちは持っていなかった。
消去法で大学病院を3日後に予約した。
夫はその後仕事に行ったため、家には私と息子の二人だけだった。
もらった紹介状を見ると、症状という欄に
「潜在性二分脊椎症」と記載されていた。
その言葉を見た瞬間、涙がとめどなく溢れた。
妊娠しているとわかった時点で葉酸を飲んだのに、
ビタミンDも鉄分も出産するまでずっと飲んでいたのに、
カフェインも控えたのに、
インスタントも食べないように努力したのに、
私の何がいけなかったんだろう、、、
息子、本当にごめんね、
健常者として産めなくてごめんね。
後悔してもこの状況は変えられないのに、
後悔ばかりが浮かんで涙が止まらない。
息子の前で大泣きしたのはこの日が初めてだった。
【潜在性二分脊椎がわかるまで】④確信
潜在性二分脊椎について毎日のように調べていたある日、ある論文を見つけた。
論文をじっくり読みすすめていくと、息子のお尻にある跡と全く同じ写真が掲載されていた。
潜在性二分脊椎である確率は77%
という説明とともに、、、
私が感じた違和感は間違ってなかったんだ
やはり潜在性二分脊椎で間違いない
そう確信した夜だった。
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次の日の朝、夫に
息子の左足に違和感を感じること
お尻にある跡が潜在性二分脊椎である可能性が高いこと
早く病院に行って診てもらわなければいけない、と焦る私とは裏腹に夫はあっけらかんとしていた。
次の予防接種(2週間後)のときに聞くのはだめなの?と。
その言葉を聞いた瞬間、怒りでブチ切れそうになったが、そこは堪えて冷静に説明をした。
私の説明を聞いて納得したのか、夫が休みの日に病院へ行くことになった。
夫の休みまであと2日。
2日間がとてつもなく長く感じた。